オルフェオのエコー
こんにちは。
8月になりましたね。 このところ、太陽の光にご無沙汰しているのですが、心の中は熱いです。 というのも、7月下旬に、古楽のグループで1年に一回行っている「イタリア詩学の会」が開かれ、モンテヴェルディのオペラ「オルフェオ」についての素晴らしい講座を受けてきたからです。 場所は東京音楽大学。 イタリア語の鈴木信吾先生が、イタリア語の詩の形式について解説されました。 モンテヴェルディをはじめバロック音楽の歌詞は、韻律を持った詩で書かれています。 作曲家はこの詩の形式を熟知し、言葉の意味がこわれないように音楽を付けていきます。 ということは、私たち演奏家も同じようにアプローチするといいのですね。 まず、歌詞のリズムを把握すること。 それにはイタリア語の知識や詩のリズム構造を知ることなのですね。 イタリア語の詩には、4,8,5,7,11音節詩行があります。 これらの詩の、アクセントの位置が大事になります。 アクセントのところにつけられたモンテヴェルディのメロディーを見ると、なるほど、音程が高くなりクレッシェンドしているような、また、長い音符で書かれていたりと、ちょうどこれが強調されているように見えるのです。 歌詞を詩の構造に沿って読んでいくと、そのまま音楽になれます。 また面白かったのが、rima baciata リーマ バチアータ 「韻がキスをする」という箇所。 これは詩の最後のところの韻が2行続けて踏んでいるところのことです。 この、韻のつづくところ、韻が「キスをする」と、次の音楽の構造はそれまでとガラッと変わるのですね。 たとえば、アリアに、と。 それにしても、この、韻がキスをするなんて表現、アモーレの国イタリアらしいと思いませんか? なんだかとってもロマンチックで さて、午前中に詩を把握したあと、私の先輩でもあるテノール歌手の福島康晴さんが、ピアノで伴奏をつけて歌いながら、「オルフェオ」の第5幕、アポロとオルフェオディアログ部分の楽譜解析をしてくださいました。 福島さんが歌いながら楽譜に込められている意味を説明し、天上のアポロと地上のオルフェオの世界の違いが、使われている旋法の違いによって表されていることなどをお話下さいました。 その歌声が柔らかくて、本当にイタリアの響きだったのです。 柔らかな光の、丸いドームの天井を思わせました。 私は福島さんの歌を何年か前にも聴いていたのですが、なんだかすっかりイタリア人のような声でした。 鈴木先生の朗読された韻律を持った詩のリズムが、福島さんの歌によって見事に音楽に変容を遂げました そして、締めの講義は丸山桂介先生。 モンテヴェルディのオルフェオを生み出した神話、「オルフェオとエウリディーチェ」にまつわるお話。 神話、宇宙論、オルフェオの最後のモレスカのダンスについて、はたまた人間の脳科学について、スケールの大きすぎるお話でした。 その後、講座を受講していた仲間と福島さんとみんなでお茶会をしましたが、それが五角形の形でテーブルを囲んだため、名付けて「ペンタゴン茶会」 その後、まるでオルフェオのEcoが私たちに乗り移ったのか、池袋駅地下構内で3人による三角形的立ち話、名付けてトライアングル立ち話。 このメンバーが、またまたすごいです。 このオルフェオのエコーは、その後数日間、私の魂の中に住んでおりました。 良い講座、良い場、良い仲間。 時空を超えて、旅は永遠に続きます 今日も、お読み頂きまして、ありがとうございました。 スポンサーサイト
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