アトリエ バロック フランセーズ

心身の調和と健康、芸術性を育むバロック音楽とダンスのアトリエ

リコーダー奏者 ヘイコ・テル・シェヘットとの思い出

こんにちは。


先日、楽譜の整理をしていたら、ドイツ留学中ブレーメンのヴァッハト通りにあるBartels Noten という楽譜屋さんで買ったバロック音楽の楽譜が色々出てきました。


テレマンの、フルートとヴァイオリンのためのメトーディッシェソナタ、ルクレールのこれまたヴァイオリンとフルートのためのソナタ、などなど。


バロック時代は、ヴァイオリンとフルートは同じ曲を弾けたのですよね。


テレマンやルクレールは、バロック装飾法や通奏低音を学ぶのに欠かせない、とても良い教材なのです。



そうそう、私はこのテレマンのメトーディッシェソナタを、オランダのユトレヒトのリコーダー奏者 ヘイコ・テル・シェヘットのお宅に行ってリハーサルした時に、彼からたくさんのことを教えていただきました。


ヘイコとは岡山音楽祭で共演したのですが、彼の家に行って一緒に音楽をできたことは私にとってかけがえのない思い出です。


まず驚いたのは、ヘイコの家の入り口がすでに台所だったこと。


オランダのきれいなタイル張りキッチンが、玄関。


案内された私は、「え?」 と思ってしまいました。


これでいいんだ。
家って玄関が台所でも、いいんだな。 と。


世界を見ると、価値観が柔軟になりますね。


ありえないものは、ないんだなと。



ヘイコの名字のシェヘットというオランダ語は、どうやらオランダ人にしかできないらしく、彼のドイツ人の奥様も正しく発音できないのですと。


私も彼の真似をして一生懸命 シェヘット、シェヘット、と発音してみるのですが、何度やってもヘイコは笑います。



まあ、オランダ語に近いドイツ語を話す人たちが無理なのですから、仕方がないです



というわけで、ヘイコとの雑談は和やかな雰囲気だったのですが、

いざ、音楽となると、いや厳しい。


ヘイコ自身がチェンバロの通奏低音は達者でいらっしゃるので、1拍目のタイミングやアルペッジョの合わせ方などを細かく指摘されました。

ミスタッチは絶対に許されませんでした。

まあ、これがプロとして当たり前の世界なのですね。



ミスは、仕方がないことです。

でも、絶対にミスをしてはならないということを言われて練習すると、ミスは本当にしなくなるものです。


ヘイコとコンサートを終えて、彼は私に、


「いや、よく弾いてくれた」


と、一言、笑顔で言って下さいました。


ヘイコは、普段、ユダヤ人のフォルテピアノ奏者ズヴィ・メニカと共演しています。

ズヴィ・メニカはハノーファー音楽大学のチェンバロ教授で、私の恩師ロバートカイ先生の後に教授として地位につきました。

素晴らしいフォルテピアノ奏者のひとりです。



ヘイコのリコーダーは、静謐です。

ダンスで言えば、貴族風の noble という言葉がよくあてはまると思います。


あれから何年経ったのだろう。


ヘイコのリコーダーの響きも、すぐに頭の中で甦ります。



いい響きは、記憶にインプットされるということなのですね。



さて、ヘイコの音楽的厳格さを思い出して、気が引き締まってきました(笑)



今日も、一生懸命練習しようと思います。



今日も、お読み頂きまして、ありがとうございました。




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ソレムのサン・ピエール修道院の思い出

こんにちは。

私の初めての海外旅行は、大学を卒業した年に実現しました。
独りが断然勉強になる、と師に勧められてヨーロッパの地をたった一人で訪れました。

フランス、ベルギーの旅でした。

フランスのパリは旅行の初心者でも比較的楽に回ることができるから、と教えていただきましたのでパリに一週間泊まり、その間にベルギーのブルージュに日帰りしてメムリンク美術館へ行きました。

パリを巡ってから最後、週末の2日間をフランス西部のソレムという田舎を訪れて、サン・ピエール修道院へグレゴリオ聖歌のミサに出席しました。

これは、忘れられない思い出のひとつです。

パリのモンパルナス駅からTGVに乗って、ル・マンで乗り換えました。
待ち時間が長く、1時間半は待ちました。

駅には何もありません。
暗くてベンチがあるのみ。

ベンチで金髪の長い髪の男性がおもむろにズボンの脇にくっつけていたフランスパンを取り出し、ナイフで切り、そのまま食べていました。
外でフランスパンをナイフで切って食べるということが日本人の私には珍しい光景でしたので、思わずずーっと見てしまいました。
フランスなんだな、と感じた瞬間でした。

駅の乗り換えでは、ホームでフランス人から
「アンジェ行きは、これでいいの?」
と、電車を尋ねられました。
「ええ」
と私は答えながら、フランス人って外国人にも全然平気で尋ねるのだなと、不思議に思ったものでした。
後にドイツで滞在した時、こんなことはほとんどありませんでしたね。

さて、サブレという小さい街の駅に着くと、大きなイチョウの樹が立っていました。
タクシーを待って乗り込むと、なんと女性の運転手。
その頃、日本では女性のタクシー運転手は見たことがありませんでした。
狭い道幅を、80キロのスピードでタクシーはソレムの村に向かってどんどん進みます。
ちょっと怖かったですね

フランスの田舎ののどかな風景は、日本では写真でしか見たことがありませんでした。
緑の草原に白い羊。
石造りの小さな家。
川を渡ると、いよいよ修道院が現れました。
大きかったです。

目の前がホテル。

ホテルに到着するとマダムがテキパキと喋り、何を言っているのか戸惑いました。
ホテルの部屋から近所の家々の赤茶色の屋根が見え、ゴーン、ゴーン、と、時報を伝える修道院の鐘の音が聞こえて来ました。

ああ、これはCDの鐘の音ではなくて、本物の鐘の響きなんだ!
私は心で味わいました。

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、ここの修道院のグレゴリオ聖歌は有名でCD録音が出ています。
私もそれを聞いて知っていました。
彫刻家のアルベルト・ジャコメッティもこのグレゴリオ聖歌の録音を気に入っていて、よく仕事の終わりに聴いていたそうです。
「柔らかなメロペ、これこそ本当の音楽だ」 という、ジャコメッティの言葉も残されています。

部屋で一休みした後、ヴェスペル、日曜日のミサの予定を確認しに修道院に向かいました。
ホテルの目の前なので、近くて助かりました。

教会の中に入ってゆくと、真っ白いオーラを感じ、余りの静けさ神聖さに涙が止まらなくなってしまいました。
壁にはマリアがいて、優しく包んでくれていました。
何分そこに立って泣いていたのか分かりません。
華やかな飾りは全然無いのに、ただただ真っ白い透き通った空気が私の全身を浄めてくれました。

落ち着いてミサの予定を見ました。
17時からヴェスペルでした。

初めての本格的なミサに出席するということで、少し緊張していました。

一旦ホテルに戻り、17時のミサに再び教会に向かいました。

ミサが始まりました。
修道士が次々と現れました。
儀式が始まり、修道士らの歌うグレゴリオ聖歌に耳を傾けていると、心が芯から安らいで行きました。
メロディはどこからともなく始まり風のように自然なデュナーミクで歌われ、修道士達の音楽の呼吸には優しく慰めるような真の癒しがありました。

パイプオルガンの間奏も、バッハの曲も入って教会中に堂々と響いて素晴らしかったです。
ミサは滞りなく流れていき、演劇を見ているような気もしました。
観客も参加できる演劇。
観客同士も抱擁し、心をひとつに出来るスペクタクル。

最後のオルガン演奏が始まり、聴きながら私はまた涙が止まらなくなりました。
こんなに感動出来る演奏は、それまで聴いたことがありませんでした。
人々の心と精神がひとつになることは、音楽をより意味深くするのだと感じました。

修道院の小さな売店で買ったマリアのペンダント、あれからもう月日がかなり経っておりますが大事にしています。



優しい表情のマリアですね。

日曜日のミサにも出席し、帰路に着きました。

サブレ駅で乗った各駅停車の埃っぽい車内で発車するのを待ちながら窓を上から開けて見た光景は、黄色い葉っぱと柔らかな風が、「ありがとう、また来て下さい。」 と言ってくれているようでした。

さわやかなソレムの修道院の思い出。

長文にお付き合い下さり、お読みいただきまして、ありがとうございました


会話をつなぐ猫

こんにちは。

私のドイツのハノーファーでホームステイしていた家には3ひきの猫がいました。
ひとつはヴァルターという大きな黒い猫、フィリックスという黒白まだらな猫、そしてグレーのルーチという小さい雌猫でした。

ドイツのアパートは広くて6部屋もありました。
それで家賃は多分日本の3分の1位でした。

広いので暖房があってもそれほど暑くはならないのですが、室内は常に一定の温度に保たれていて、暑すぎず寒すぎずといった感じでした。
寒がりの私には、少し寒いくらいでしたね。

初めてのドイツのホームステイではじめに仲良くなったのは、黒白猫のフィリックスでした。
その頃、朝早くにドイツ語学校に出かける私を知っていて、部屋に餌をねだりにくるのでした。
ドイツの学校は8時始まりだったので、7時には家を出なければなりませんでした。

それでフィリックスが起こしに来るのは朝6時。
いつも同じ時間でした。

動物は、時間を良く知っていますよね。

この猫たちのお陰で、ホームステイの家族とも一層仲良くなれたのだと思っています。
動物がいると何よりも、笑いが増えますよね。

フィリックスは特にひょうきんな性格で、自分と同じ模様の黒白の牛のぬいぐるみの横によく座っていたのです。
同じ模様の猫と牛が、棚の上にいるものですから、それは面白かったです。

見るたびに笑ってしまい、つられてドイツの家族の方も笑うと、それから自然に話が始まりました。
難しいネイティブ同士のドイツ語も、少しわかったような気になったものでした。

笑ってリラックスするって、勉強にも良いみたいですね。

それを教えてくれた猫のフィリックス。

今は、私も迷い込んできた猫と一緒にいます。
黒猫のクロ。
ニャーというと返事をし、寒いのもへっちゃらな変わった猫です。




今日も、お読み下さりまして、ありがとうございました。


ドイツの大晦日

今日は一年の終わりの日ですね。

ドイツでは大晦日を Silvester ジルヴェスターと言います。
ドイツの街ではこの日はお昼を過ぎた頃からパン、パン、と花火の音がしてきます。
皆が思い思いに花火を打ち上げ、喜びを表します。

何だかちょっと不思議な光景でしたね。

深夜には家族が家の中でも線香花火で祝い始まったので私は思わず、
「えー、火事になる!」
と、思ったものでした。
日本では考えられないことですね

日本では大晦日に年越しそばを食べますが、ドイツでは Berliner ベルリーナーという、ジャム入りドーナツを深夜に食べるのです。
私がホームステイしていた家では夜11時頃、油をグラグラ煮立てて昼間に発酵させておいたパン生地を小さく丸めて次々とドーナツを揚げていきました。

パン生地は、揚げるとあっという間に膨らんで出来上がってしまうのです。
冷めたら中にジャムを入れます。

これを夜12時の教会の鐘の音と共に食します。
白ワインを飲んでいましたね。

家族は共に抱き合い、キスをして新年を祝います。
「Frohes neues Jahr ! (フロース ノイエス ヤー!あけましておめでとう!)」
と言いながら。

その頃、外は打ち上げ花火の音が鳴りやむことなく2時間くらい続きました。

新年元日の朝は、道路が花火のゴミだらけです。
それもいつの間にかきれいに掃除されますが。
懐かしい思い出です。

今日も、お読み下さりまして、ありがとうございました。

それでは皆様、また来年もどうぞよろしくお願いいたします!

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今日の空です。真ん中にヒトデみたいな雲が


大好きな木漏れ日


ドイツの家庭のお話・・・クリスマスに向かって

こんにちは。

11月も残すところあと3日。
もうすぐ12月、年末ですね。
日本では大掃除の季節ですが...ドイツではお料理の季節です。
ドイツでは大掃除は4月に行われます。

ドイツの家庭ではクリスマスの4週前から大量のクッキーを焼きます。
4週前の日曜日はキリスト教の第一アドヴェントで、(ちょうど今年は昨日でした) クリスマスに向かってお祝いのお菓子を焼きます。

私がホームステイしていたお家では、シンプルな型抜きクッキーと砂糖かけパイを大きな缶2つ分作っていました。
それからドライフルーツが色とりどりに入ったケーキパンも。日本ではシュトーレンで知られていますが、家庭で作ったものは味が優しいですね。そしてヴァリエーションがあります。
一度に10本くらい焼きます。
アドヴェントの日曜日は、一日中お料理をする日になります。
一度作ってしまうと、あとはそれをクリスマスまで少しずつ食べていくのです。
私は日本のおせち料理みたいな伝統なのだな、と感じました。

ドイツの冬は日が短く、たいてい曇り空が続きます。
夜は家族のみんなでゲームをしました。
かつて日本でも流行った 「人生ゲーム」みたいなものです。
すごろくの複雑版もありました。
家族の方にゲームの説明をしてもらい、私もなんとかついて行きました。
ドイツのゲームは結構ルールが面倒でしたね。

でもそんな風に、テレビをあまり見ないで家族で過ごすのは良いものですね。

私が居たドイツの家庭では、食事のときにテレビを見ることは全然なく、家族でおしゃべりしました。
ネイティブの会話についていくのは大変でしたが一生懸命聞きました。
外国語の会話は、まず聞き取れることが大事なことだと思っていましたので、とても役に立ちました。

家族で食卓を囲む。
互いの話に耳を傾ける。
笑いあい、意見を述べ合う。

ドイツの家庭は、そんな普通の暮らしを大事にしています。
そして、クリスマスが近づくことを何よりも楽しみにしているようです。

私が経験したドイツのクリスマスの様子は、また書いてみたいと思います。


今日も、お読み下さりまして、ありがとうございました。



今日も空がきれいです


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プロフィール


臼井雅美

Author:臼井雅美
ピアノを東京音楽大学で、古楽をドイツのブレーメン芸術大学とフィンランドで学びました。
チェンバリスト、クラヴィコーディストです。
バロックダンスは、フランスで勉強してきました。
ピアノは大手楽器店、また個人の音楽教室でたくさんの子供たちを教えていました。

カーステン・ローフ教授によるプロフェッショナルチェンバリスト、通奏低音奏者資格取得

フランソワーズ・ドニオによるバロックダンス教授資格取得

ハノーファー・インリィングアで、ドイツ語資格B1取得

DELFフランス国民教育省フランス語資格試験B2取得

アテネ・フランセ フランス語上級試験合格

2002年東京音楽大学研究員
2005年~2011年東京音楽大学「音楽と修辞」担当助手
2005年~2011年くらしき作陽大学特別講師
バッハの学校講師

栃木県蔵の街音楽祭、岡山音楽祭、松山音楽祭出場

丸山桂介著「バッハ聖なるものの創造」(2011年春秋社)に、バロック運指法について記述、並びにクラヴィコードによるバッハ「インヴェンションとシンフォニア全曲」を収録。(ISBN978-4-393-93788-4C0073)

ソロ演奏会や日本や海外の演奏家との共演、レッスンを行っています。

猫とチョコレート、自然が大好きです。


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