アトリエ バロック フランセーズ

心身の調和と健康、芸術性を育むバロック音楽とダンスのアトリエ

ピアノで音作り実験

こんにちは。


先週は、出張レッスンが続きました。


ピアノのレッスンでは、チェルニーのピアノ奏法から音作りを中心に、ベートーヴェンの告別ソナタのレッスンをしました。



生徒さんはずっと、「音」についての悩みを持っていらしているようで...。

いい音を出したい、でも、納得できない.....。

悩みを解決するために、チェンバロやクラヴィコードの発想からご一緒に実験していただきました。



クラヴィコードは、鍵盤楽器でも原点といわれるように、そのつくりはシンプルです。

指の打鍵がそのまま弦を触るタイミングと一致します。

ですから、指の正確な打鍵の仕方によって、音が美しくなるのか、全く音にならないかが決まるのです。



チェンバロは、クラヴィコードほど神経質にならなくても、一応、音は出ます。

でも、機能的には強弱はつきません。

ですから強弱を付けるのは、イメージと、指のタッチの微妙な変化なのですね。



ピアノは、強弱はつけられますね。

でも、音そのものを美しく響かせるのは、容易ではありません。



レッスンでは、それらをミックスして打鍵を作ってみました。


鍵盤は下に下がりますが、それを指で力を入れて下に押さないこと。

その代わりに、意識をピアノの中の、ハンマーと弦のところに感じてもらいました。



指の運動と、ハンマーが弦を打つタイミングが、クラヴィコードのように、一致するかどうか。


実は、今のピアノはイギリス式アクションで作られていますので、このタイミングが若干ずれています。

このタイミングのずれによって、より響きが大きくなり、広いホールに対応できるようになったのですね。



このアクションは変えられないとしても、意識でタイミングを一致させてみたらどうなるかをやっていただいたところ、



芯のある、(生徒さん曰く) 核のある理想的な響きができたのです!



響きは、求めている本人が本当によく納得でき、


「これ、これです。この響きが欲しかったのです。」


と、おっしゃってくださいました。


ついでに姿勢、特に背中を意識してもらっていたので、なおさら連動して良い響きになりました





ベートーヴェンは、アダージョ・モルトで上昇する、ホ長調のレガート音階を書き、それについての1796年頃の手紙の中で、こう書いたそうです。

「この場合難しいのは、この全パッセージを、打鍵するのが全く聞こえないように、あたかも弓でこするようにレガートさせ、かつそのように響かせねばならない......」


ヴィオラの得意だったベートーヴェンのイメージには、やはり弦楽器の響きはとても大切だったのですね。

打鍵するのが全く聞こえないように、というところが難しいですね。



レッスンの翌日、生徒さんからメッセージをいただきました。

ご自分で納得できると、さらに前に進めます、という嬉しいものでした。



また、次回のレッスンが楽しみです。



今日も、お読み頂きまして、ありがとうございました。




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今週のレッスン・・・その2 チェルニーのピアノ奏法でピアノレッスン

その2です。

出張ピアノレッスンでは、ベートーヴェンのソナタをレッスンしました。

ソナタをいきなりレッスンするのではなく、まず練習曲から始まります。

練習曲として使用しているのが、ベートーヴェンの音楽教育を受けそれを後世に遺して下さった、チェルニーの「ピアノ奏法」教本です。


第3部イントロダクションのセクション1から第1章セクション2までを生徒さんと一緒におさらいしました。


ここでチェルニーが述べているのは、5本の指の訓練。

アクセントを各指に明確に与えられるようになるための訓練です。



......と、ここでなんだか文章に 「え?」 と疑問をもたれませんか?


チェルニーは、

「指でアクセントをつける」

のではなくて、

「アクセントが指に与えられる」

という表現を用いているのですよね。



「アクセント」 が主語で、「指」は受け身になります。

「我」 が弾くのではなく、響くアクセントが向こうから 「やってくる」 という感じでしょうか。



つまり、その後に続く文章、

「それが聴き手に聴こえはするけれど、目に見えるようであってはならない」

「各音を最も強く際立たせる場合や、それこそクレッシェンドの場合も、手と腕は可能な限り静かに保たれなければならない」


ということに結びついてきます。

耳で感知できるほどの、明確なアクセント。

でも、演奏者の手の動きは静かで目には分からない、ということではないかと思います。


ベートーヴェンの演奏を当時聴いたという ウィルブロルド・ヨーゼフ・メーラーによると、

「ベートーヴェンは両手を非常に静かに弾いた。演奏は素晴らしく、両手を左右あるいは上下にゆり動かすことなく、ただ鍵盤上を左右にすべらすように指だけが動いていた」


生徒さんはこれを聞くと、なるほど!と、一瞬で理解してくれました。



またチェルニーは、強弱記号の pp ピアニッシモから、ff フォルティッシモまでを、強さとしてではなく、キャラクターの違いとして捉えています。


その意味を一緒に読みました。

例えば、

「ピアニッシモは.........謎にみちたもの、神秘的なもののキャラクターを備え、完成されたppの演奏では彼方から聴こえるエコーのような効果をもたらし得る..........」 云々。


このように ピアニッシモ、ピアノ、メッザ・ヴォーチェ、フォルテ、フォルティッシモまで、全部書かれています。


メッザ・ヴォーチェはメゾ・フォルテのことを指していて、メゾ・ピアノはまだ存在していない時代でした。


「メッザ」 mezza すなわち 「中庸」 を意味するこの言葉の中には、ヨーロッパ人が大切にしてきたストア哲学的な心のあり方をも含んでいるようです。

そしてこのメッザ・ヴォーチェこそ、強さを意味してはいないということが描かれています。

それは、表現する内容によって左右される響きを意味しているということ。


強弱の中には、当時は計り知れないほどの深い意味が込められていたのですね。



このようにして音のイメージをはじめに捉えてからベートーヴェンのソナタに入りました。



ベートーヴェンの曲には割と3度の和音の音階が出てくるのですが、これが難しいようなのですね。


ここで、これを解決するのにチェンバロで使っている、クープランのクラヴサン奏法の中の指使いのところを参考にしました。

指替えのところです。

鍵盤を人差し指で鳴らしたあと、その同じ鍵盤上で親指に替えていく指使いです。


これを5本の指でスムーズにできると、テクニックの幅が広がってきます。


一生懸命に指で練習しなくても、3度の音階、半音階はスラスラ弾けるようになります。



これを一緒に何回かおさらいすると、間もなく力を入れずにスーッと鍵盤上を指がすべっていきました。


生徒さんは、クリアーできなかったことができるようにになったので感激していました



チェルニーや、クープランの教本の素晴らしさ、それが後世に遺っていること、また言葉や著書の大切さを大事に引き続きレッスンをしていきたいと思います。



お読み頂きまして、ありがとうございました




弦の長さからつくるデュナーミク

こんにちは。


昨日のレッスンのチェルニーのデュナーミクの話に続いて、

もうひとつ行った事を書きます。


それはデュナーミクを単純に 「音の大きさ」 だけで表現しない方法です。


何を意識するかというと、


「弦の長さ」。


これは、チェンバロを習ったことがあると実感するのですが、


チェンバロは、デュナーミクの変化をピアノやヴァイオリンみたいにつけられないのですね。


ですから音楽的に聴こえるようにするためには、たくさんの工夫が必要になります。


そのひとつに、


「弦の長さ」 による音色の違いを良く聴くこと、があります。


たとえば、真ん中の「ド」の音よりも 1オクターブ低い「ド」 の弦の長さは単純に2倍になります。


弦の長さを、頭の中に思い浮かべてみて下さい。


長い弦と、その半分の長さの弦。

8フィートと4フィート。


同じくらいの力で、指で弦を鳴らしたら、


長い弦のほうが短い弦よりも響くと思いませんか?




それを、ピアノの鍵盤に置き換えてみます。


同じ「p」 ピアノの強弱記号が、真ん中の「ド」 と、1オクターブ低い「ド」についていたら、


同じような弱さで弾いても、響きは全く違ってくるのですね。



この異なる響きをよく味わい、充実した「p」 ピアノの強弱を作ってみること。


ひとつひとつの音は、違った存在価値を持っています。


でも、楽譜に「f」 フォルテや「p」 ピアノを見ると、つい、


「強く」 、「弱く」


 と、思ってしまいませんか?


音の強弱は、そのフレーズが「喜び」 を表したいのか、「悲しみ、絶望」 または「諦め」 などの感情を表現したいのかによって、

意味も響き方も、全く変わってきます。



昨日は、ベートーヴェンのソナタの第1楽章であっという間にレッスンが終わりました。


響きのニュアンスを作っていくのは、忍耐がいりますね。


でも、生徒さん、レッスンの後はとびっきりの笑顔


「あちこちの疑問が晴れた!」


と、言って下さいました。


ああ、思ったように弾けていくお手伝いができるなんて...。


本当に嬉しいです


ベートーヴェンのソナタの、感情表現についても触れていきました。


続きは、また来月です。


美しいベートーヴェンのソナタに仕上がっていくことと思います。


☆~☆~☆~☆~☆


アトリエバロックフランセーズ

チェンバロ、ピアノ、クラヴィコード、バロックダンス

アトリエ整備中のため、ただいま出張レッスンのみで行っています

レッスンのお問い合わせは臼井までメールでお願いいたします。

masami22358★gmail.com(★を@マークに変えて送信して下さい)




今日も、お読み頂きまして、ありがとうございました。




チェルニーのピアノ奏法より・・・出張ピアノレッスン

こんばんは。

今日は出張ピアノレッスンをしました。


先日ブログで書いたベートーヴェンのピアノソナタです。


今日は、曲を弾く前に、チェルニーの「ピアノ奏法」教本の中の2小節の課題を弾いていただきました。

(チェルニー30番や40番、などの練習曲ではありません)



何の練習かというと、

強弱を、8段階に分けてつける練習です。



まず始めの一小節の中の8個の音をクレッシェンドします。

次の一小節の8個の音は、デクレッシェンドします。




音ひとつずつ、「p」 ピアノから、だんだん強く、だんだん弱く。



それが、意外と、難しいのですね。

だんだん強くはOK。

でも、だんだん弱くは、難しい。

途中で、ポコっと、音が強くなってしまったりします。



チェルニーは、この練習を、3つの段階に分けました。


① 「p」 ピアノから ふつうにクレッシェンドして、デクレッシェンドする。

② 「mf」 メッゾフォルテから 「f」 フォルテまで、クレッシェンドして、またデクレッシェンドする。

③ 「f」 フォルテから 「ff」 フォルテッシモまで、クレッシェンドして、またデクレッシェンドする。



これは、指のコントロールと、脳で音色をコントロールすること、この2つが訓練されます。




この訓練と同じことを私は、フィンランドでミクローシュ・シュパンニ先生から、クラヴィコードで習いました。



クラヴィコードは、そのデュナーミクの幅はピアノよりずっと小さいですが、常に美しい音でデュナーミクをつけるのはとても大変でした。



ベートーヴェンは、クラヴィコードで育ち、クラヴィコードの名手でした。


そしてそのベートーヴェンの愛弟子だったチェルニー。


チェルニーを学ぶことは、ベートーヴェンの考えを学ぶことなのですね。




今日のレッスンでは、この3つのデュナーミクの練習を30分くらいしていただいた後に、ベートーヴェンのソナタのレッスンをしました。



ソナタの中のデュナーミクをつける時にも、


このチェルニーの練習が応用されていることを、生徒さんの方から気がついて下さいました。


嬉しいですね


もちろんベートーヴェンの曲の方がずっと複雑に書かれているのですが、


まず単純なところでしっかり訓練すると、複雑になってもちゃんとできるのですね。



デュナーミクを付けるヒントは、またチェンバロの観点からも教えて行きました。


これはまた、次回に書きますね。



今日も、お読み頂きまして、ありがとうございました。



次回の出張ピアノレッスン準備・・・ベートーヴェン

こんばんは。


ただいま次の出張ピアノのレッスン準備中です。


大人のためのピアノレッスンです。


次回はベートーヴェンのソナタをレッスンします。


私はベートーヴェンが幼少期にチェンバロやクラヴィコードで音楽教育を受け、それがベートーヴェンのテクニックの基礎を築いていることにポイントを置いてレッスンをして行きます。


現代ピアノはタッチがイギリス式で作られているので、ベートーヴェンが長い間所持していたウィーン式ピアノのアクションとは異なる感触になるのですね。


ウィーン式ピアノはクラヴィコードの構造に近いピアノですから、ベートーヴェンの作曲の着想が反映されていると考えられています。


それから、ベートーヴェンその人を形成した、ボン時代の歴史背景を知ることもとても大切なことです。


ベートーヴェンがリュリやモリエールのオペラに相当親しんでいたこと。

自らもオーケストラに加わって演奏していたこと、など。



そういう細かな知識も、イメージを作るには有効ですよね。



さて、演奏するには、まず楽器をマスターしなければ弾けませんよね。


フォルテピアノ、あるいはピアノフォルテ。


その多様なデュナーミクは、アフェクトから響かせられなければなりませんね。


難しく聞こえるみたいですが、テクニックのために練習するテクニックよりも、はじめから音楽的に作って行く方が、早道ではないかと考えています。


演奏する方が、思ったような響きに近づけるためのお手伝いをさせていただけましたら、嬉しいです


頑張ります。



今日も、お読み頂きまして、ありがとうございました。




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プロフィール


臼井雅美

Author:臼井雅美
ピアノを東京音楽大学で、古楽をドイツのブレーメン芸術大学とフィンランドで学びました。
チェンバリスト、クラヴィコーディストです。
バロックダンスは、フランスで勉強してきました。
ピアノは大手楽器店、また個人の音楽教室でたくさんの子供たちを教えていました。

カーステン・ローフ教授によるプロフェッショナルチェンバリスト、通奏低音奏者資格取得

フランソワーズ・ドニオによるバロックダンス教授資格取得

ハノーファー・インリィングアで、ドイツ語資格B1取得

DELFフランス国民教育省フランス語資格試験B2取得

アテネ・フランセ フランス語上級試験合格

2002年東京音楽大学研究員
2005年~2011年東京音楽大学「音楽と修辞」担当助手
2005年~2011年くらしき作陽大学特別講師
バッハの学校講師

栃木県蔵の街音楽祭、岡山音楽祭、松山音楽祭出場

丸山桂介著「バッハ聖なるものの創造」(2011年春秋社)に、バロック運指法について記述、並びにクラヴィコードによるバッハ「インヴェンションとシンフォニア全曲」を収録。(ISBN978-4-393-93788-4C0073)

ソロ演奏会や日本や海外の演奏家との共演、レッスンを行っています。

猫とチョコレート、自然が大好きです。


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